■□ 王道通信 □■ Vol.42
目次
1...専業大家の独り言 〜 アパートローンと住宅ローンの違い
2...借地入門(1) 〜 借地とは何か?
3...編集後記
1...専業大家の独り言・白岩貢
◇アパートローンと住宅ローンの違い
アパート専業大家・白岩貢
- 11月の「オンリーワン勉強会」では、某メガバンクのアパートローンの担当者 が話をしてくれました。
その中で興味深かったのが、アパートローンと住宅ローンの違い。
住宅ローンを借りている人は多いでしょうが、アパートローンは同じ、土地、 建物とうい不動産に対する投資ではあるが、違いもいろいろあります。
それをいくつか整理してみました。
●申し込み
そもそも、・住宅ローンはかなりパターン化された商品。
一定の項目に沿って、融資の可否や融資条件を判断します。
それに対し、アパートローンはオーダーメイド。
対象となるアパートや借りる人の条件などでいろいろ変わります。
たとえば、土地の購入では、アパートローンは審査に1ヶ月ほどかかるそうです。
住宅ローンなら1〜2日で審査結果が出るのに対してかなり長いですね。
また、申し込み書類が、アパートローンのほうがはるかに多くなります。
年収を証明する源泉徴収は3年分、他の投資物件の固定資産税通知書や家賃明細、 預金通帳のコピー(資産背景をチェックするため)、他の借り入れの返済明細書、 さらには家系図(法定相続人の生年月日と住所も)などが必要だそうです。
●借り入れの条件
住宅ローンだと70歳未満など年齢に上限がありますが、アパートローンには 年齢制限がありません。
逆に、中古の区分所有マンションについて、住宅ローンは問題なく借りられます が、アパートローンは通常1棟ものを対象としており、難しいそうです。
●融資額
住宅ローンは予め一定の上限がありますが、アパートローンは基本的に担保次第。
ただし、中古物件に融資する場合、アパートローンでは、融資額の計算において 修繕費を見込むそうです。
●返済方法
元利均等返済と元金均等返済があるのは同じ。
返済期間は最長30年というのも、銀行ローンとしては同じようです。 なお、アパートローンでは、建物が完成してから1〜2ヶ月、入居者の募集期間 として返済を据え置きできます。
●保証
住宅ローンは現在、保証会社の保証をつけるので、保証人は不要です。
また、住宅ローンは、団体信用生命保険がセットになっており、借りた人に万が 一のことがあったら保険料でローンの残債がカバーされます。
一方、アパートローンは、法定相続人のうち少なくとも1名(通常は同居者) を連帯保証人につけなければならないそうです。
その代わり、保証会社の保証料が不要で、借り入れ時の経費がかなり抑えられます。
また、アパートローンは、団信の加入は任意。
ただし、完済時70歳までなら加入することも可能で、その場合は連帯保証人は不 要です(ただし、融資額が1億円を超えるとやはり連帯保証人必要)。
●その他
土地から購入する場合、住宅ローンは建物のプランなどには制限はなく借りられます。
しかし、アパートローンでは、建物も含めてのプロジェクトとして判断されるので、事前審査の際の建物プランが途中で変更になると借りられないこともあるそ うです。
繰り上げ返済の手数料について、住宅ローンでは一律1万円など定額ですが、 アパートローンでは、そのときの金利状況によって精算金が発生します。
借り入れ時の金利より繰り上げ返済時の金利が低いと高め、逆なら少なめになる そうです。
変動金利で借りた場合、住宅ローンは年2回適用金利を見直しますが、 アパートローンでは毎月見直されます。
金融機関による違いもありますが、アパートローンはあくまで事業用ローン。
そのあたりのことを理解しておくと、 スムーズに利用できるのではないでしょうか。
2...借地入門(1) 〜 借地とは何か?
- アパートを建てるため、借地を購入するという選択肢があります。
借地のほうが通常の所有権の土地より安く購入できますし、賃料は立地や建物に よってほぼ決まり、土地が借地かどうかはほとんど関係ありません。
そのため、借地にアパートを建てるほうが、総投資額に対するリターンが一般に 高くなるわけです。
ただし、注意点もいろいろあります。
今回から随時、借地についての基礎知識を「借地入門」として整理してみます。
まず、借地の法律的な枠組みを確認しておきましょう。
借地とはそもそも、一定の法的権利に基づいて、他人の土地を利用すること、 またはその土地をいいます。
民法では、他人の土地を利用する権利として、工作物の所有または植林のために は「地上権」、工作または牧畜のためには「永小作権」という2つの「物権」 (所有権のように物そのものに対する強力な権利)を認めています。
また、民法では賃貸借契約に基づく「債権」(契約に基づく特定の相手に対する 相対的な権利)として、山林宅地、農地等の「賃借権」を規定しています。
しかし、民法が制定された当初、実際には借地や借家を巡る紛争が多く、そこで 民法を修正する特別法である「建物保護法」(明治42年)や借地法 (大正10年)が設けられました。
借地法では、建物の所有を目的とする「地上権」または土地の「賃借権」を 「借地権」と定義して、一体として扱っています (現在の借地借家法も同じ)。
基本は、借地人の保護です。
長期の契約期間を保障したり、契約期間が満了した後の更新について貸主に 「正当事由」を要求したり、手厚く保護するようになったのです。
戦時中はさらに、出征した兵士の家族の生活安定のため、契約の更新拒否や家賃 の値上げなどについて、いっそう厳しい制限を設けました。
戦後もそれが残ったため、地主側は「一度貸すと戻ってこない」「地代も容易に 上げられない」ということで借地に慎重になり、借地による土地の利用が進まな いという弊害も出てきました。
そこで、平成4年に施行された新借地借家法では、供給側の地主が安心して借地 を提供できるよう、契約更新を排除できる「定期借地権」が生まれたのです。
ということで現在、旧法による普通借地と定期借地が並存しています。
ただし、ポイントは、従来からある借地は、そのまま旧法の条件で購入できると いうこと。
東京など都市部でアパート用地として土地を探すなら、普通借地はまだまだ有効 な選択肢といえるでしょう。
実際、借地の売り物は、どんどん出てきています。 今後も増えることはあれ、減ることはないと思われます。
編集後記
- あっという間に今年も残り1ヶ月ほどになりました。
年内になんとか処理しなければならないことがまだだいぶ残っていて頭が痛い。
本当に年が越せるのか心配です。
というか、時間は勝手に過ぎるので、折り合いをどうつけるかだけなんですけど ね。
仕事との折り合い、人との折り合い、時代との折り合い、人生との折り合い。
うまくいくときもあれば、滞ることもあり、最後はなるようになるのでしょう。 (古井)