■□ 王道通信 □■ Vol.26
目次
1...専業大家の独り言 〜 工務店を見分けるヒント
2...不動産投資入門 〜 耐震性の確保
3...編集後記
1...専業大家の独り言・白岩貢
◇工務店を見分けるヒント
アパート専業大家・白岩貢
- 日本全国に、工務店は星の数ほど存在します。
バブル崩壊前には、およそ10万(元請け大工を含む)あったといわれ、現在は約4万弱といわれますが、それでもかなりの数です。
近所に工務店がひとつもない、という人のほうが珍しいでしょう。
こうした工務店が実は、日本の家づくりを支えてきたし、いまも支えています。
建築業界では“常識”ですが、大手ハウスメーカーの建てる一戸建てやアパートも、実際に工事を行っているのは下請けの工務店です。
別に、大手ハウスメーカーが全国に自社の施工部隊を持っているわけではありません。
彼らが持っているのは、営業部隊が中心なのです。
さて、その工務店も、親方一人でやっているところからハウスメーカー並みに年間数千棟も施工するところまでいろいろです。
さらにいえば、仕事の質もばらばらであり、施工棟数が多いからしっかりしているとはいえません。
有名工務店の中にも、クレームだらけのところは少なくないようです。
問題は、どうやって質の高い工務店を見分けるか、です。
これはアパート投資を考えている大家さんにとっても、非常に重要なポイントといえるでしょう。
最近、そのヒントを見つけました。
それは、「見積もり」の精度です。
私の実家の工務店は、腕は良かったと思いますが、お金はドンブリ勘定でした。
だから、契約の際の見積もり金額もかなりアバウト。
確かに、材料費ひとつとっても、工事期間中にだって変動しますし、納入する卸問屋や設備メーカーとの力関係でも変わってきます。
また、同じ時期に手がけている複数の工事現場の間で、人や材料のやりくりをするので、コストがごっちゃになりがちです。
さらに言えば、工程管理がいい加減でした。
大工さんが休んだり、予定していた設備機器が届かなかったりで、スケジュールがずれるのは当たり前。
だから、最初からスケジュールがゆるいのです。
このように原価管理や工程管理がいい加減だと、現場の職人もそれに慣れてしまい、材料の使い方や仕事の進め方がアバウトになってしまいます。
工務店に出入りしていた材料屋の中には、端材を集めて自宅を建てる際に使っていた人もいましたっけ。
そうした無駄をカバーするため、利益率も高めに設定していたのが、これまでの工務店業界のやり方だったのです(なお、大手ハウスメーカーのほうは、大量の営業マンやりっぱな工場、本社ビルなどのコストがすごくかかるという理由から、こちらもやはり利益率を高めに設定しています)。
しかし、最近、王道チームに参加してもらっている工務店の社長さんたちから話を聞いて驚きました。
原価管理がまず、非常にきちんとしているのです。
見積もりでは、ドアノブひとつまでカタログ価格ではなく、実勢に近い単価で出してくる。
これは、仕入れ先のネットワークがしっかりできていないとなかなかできないことです。
工程管理もきちんとしています。
予定工期は一般的な例より短いのですが、それでも遅れがほとんど発生しません。
もちろん、契約書には工期の遅れに対するペナルティーをきちんと盛り込んであり、万が一、天候などの影響で遅れそうになったら、必要な人員をかき集めてでも仕上げるというのです。
このように原価管理、工程管理がきちんとできるから、多少、安い価格で受注しても利益を確保することができます。
よく「坪●万円から」と広告して客を集め、実際は追加工事や外構工事でどんどん請求金額をふくらませる工務店とは正反対です。
アパート大家にとって、当初の見積もり、当初の工事期間で完成するのですから、これほどありがたいことはありません。
工務店を選ぶ際には、見積もりがどれくらいしっかりしているか、ぜひ参考にしてみてください。
2...不動産投資入門 〜 耐震性の確保
- 7月16日に発生した新潟中越沖地震は、マグチュードが6.8(暫定)、柏崎市や刈羽村、長岡市などで震度6を記録しました。
今回は、柏崎刈羽原発で想定以上の大きな揺れがあり、その被害も注目されています。
住宅については、1069棟が全壊、296棟が大規模半壊、1701棟が半壊でした。
また、死亡者11名のうち、8名は「建物の下敷き」になったことが原因とされています。
このことから、建物を建てる場合の地震への備えとしては、2つのことが言えるでしょう。
第一に、大きな地震でも、できるだけ建物の被害が出ないようにすること。
第二に、どんな大きな地震でも、最低限、人が下敷きにならないようにすること。
これが実は、現在の建築基準法における耐震性確保の基本的な考え方でもあります。
つまり、現在の建築基準法(「新耐震基準」といわれるもの)では、次のような目標を設定しています。
第一に、震度5程度の中地震の場合、柱・梁などの構造部材に大きな損傷は起こらず、その後、補修すれば使い続けられること。
第二に、震度6程度の大地震の場合、最低限、建物の倒壊や崩壊は起こらず、人命を確保できること(補修しても使えないことはやむを得ない)。
木造の建物の場合、この目標をクリアするため、具体的にいろいろな工夫、方法を組み合わせます。
たとえば、
●壁に筋交いを入れたり、構造用合板という強いパネルを組み込んだりする
→ 地震の横揺れのエネルギーを壁で受け止める
(地震の被害の大半は横揺れによるもの)
●床や天井の角の部分に「火打ち」と呼ばれる斜材を入れる
→ 床や天井の歪みを防ぐ
●土台や柱、梁などを金物で接合する
→ 引き抜きを防ぐ(柱などの引き抜きも実際には横揺れによる)
木造の建物は基本的に、柱や梁など軸材をつなぎ合わせ、四角い「枠」をいくつも構成してつくられています。
この「枠」が地震のエネルギーで歪み、つぶれると建物が崩壊するわけです。
ですから、「枠」を歪みにくくすることが耐震性を確保する基本となります。
これは非常に重要なポイントなので、ぜひ覚えておきましょう。
都圏でも近い将来、大地震が発生する確率はかなり高いといわれています。
これからのアパート投資では、建物についての基礎知識は不可欠です。
今回のような機会に再度、いろいろな情報を集めてみることをお勧めします。
編集後記
- 7月15日から28日まで、フロリダへ行ってきました。
最初の1週間は7都市を回って、日本とのビジネスを希望する地元中小企業とのミーティングだったのですが、それよりあちこちでマンション(コンドミニアム)の建築ラッシュで驚きました。
マイアミなどは、市内中心部で10〜20棟ほど超高層マンションの工事が進んでいて、聞くと通常の4年分以上の供給量だとか。
1戸当たりの専有面積が日本よりはるかに広いので単純には比較できませんが、1億円を超える物件がゴロゴロ。
すでに5%値下げといった看板もあり、“バブル崩壊”必至と思われます。
でも、政情不安定な中南米諸国のお金持ちが、資産逃避でまとめ買いしたりするそうですし、近い将来、キューバとの国交が回復すれば、中南米への玄関口であるマイアミにかなりの投資マネーが流れ込むとの思惑から、3〜4年でまた値上がりに転じるのではという強気の声もありました。
不動産市場もその国その国の事情と傾向があり、興味深かったです。(古井)