■□ 王道通信 □■ Vol.24
目次
1...専業大家の独り言 〜 「坪単価」のワナ
2...「王道チーム」リレーエッセイ 〜 古井一匡
3...不動産投資入門 〜 地盤の基本(3)
4...編集後記
1...専業大家の独り言・白岩貢
◇「意識」の大切さ
アパート専業大家・白岩貢
- 不動産や建築の広告でよく見かけるのが「坪単価」です。
「建築条件なしで坪150万円」とか「本体価格坪34.5万円」といったものです。
これはもちろん、1坪=約3.3m2あたりの価格を表示したもの。
総額よりは、単価にして表示したほうが、他との比較がしやすいということでしょう。
しかし、その便利さが逆に誤解を招くこともありますし、悪用されることもあります。
土地の価格を坪単価で表示するのはまだいいでしょう。
問題が大きいのは、建物の建築費です。
建物の場合は、建築費÷坪面積=坪単価です。
まず、「建築費」にどこまで含むのかが、はっきりしません。
通常、建築費といえば、本体工事費と付帯工事費の合計をいいます。
見積書もだいたいそうなっています(見積もりの形式は特に基準はなく、会社によって違います)。
本体工事費は、基礎、柱などの構造、屋根や壁、キッチン、トイレなどの設備機器など。
付帯工事は、屋外の給排水工事やガス工事、古い家の解体工事、塀や庭、車庫などの外構工事、地盤改良工事などです。
広告などでは本体工事費のみの価格をもとに坪単価表示し、隅のほうに小さく「本体工事」とか書いておいたりしているケースがあります。
その本体工事費もできるだけ安くするため、網戸や雨戸などまでオプションという会社もあるようです。
こうしたオプション費用や、さらに付帯工事費をプラスすれば、当然、建築費はもっと高くなります。
そして、広告の坪単価表示が安い会社ほど(?)、オプション工事や付帯工事(たとえば外構工事)の費用が異常に高かったりするのです。
一方、「面積」には通常、「延べ床面積(延面積)」と「施工面積」の2つがあります。
「延べ床面積」は建築確認申請の際などに用いるもので、建築基準法上の面積です。
吹き抜け部分、2mまでのバルコニー、ロフトや地下室の一部、アパートの共用廊下や共用階段、などは含みません。
それに対して「施工面積」は文字通り、工事した面積。
「延べ面積」より当然、広くなります。
たとえば、建築費が1,000万円で、延べ床面積が20坪、施工面積が25坪とすると、坪単価は延べ床面積をベースにすれば50万円ですが、施工面積をベースにすると40万円になります。
さらに、施工面積にあれこれ強引に算入すれば、さらに坪単価は安くなります。
こうして「建築費」と「面積」の両方で操作を行えば、いくらでも安い坪単価が出来上がるわけです。
でも、実際にその金額では決して建物はできません。
完成した時には、まったく別の坪単価になっています。
坪単価は確かに分かりやすく便利ですが、中身をきちんと検討しないまま表面の「数字」を鵜呑みにしていると、大きな間違いを犯すことになりかねないので、くれぐれもご注意ください。
不動産投資で重要なのは、見かけの「坪単価」ではなく、あくまで正味の総工事費です。
2...「王道チーム」リレーエッセイ 〜 大長伸吉
- こんにちは、メルマガ編集担当の古井です。
私の本業は、出版の企画・編集です。
最近もFX本の編集を進行中。
今回は、本(特に実用書やビジネス書)がどのような手順で生まれるのかを、少しご紹介してみます。
まず、最初に必要なのは企画案です。
どんなテーマで、想定読者は誰で、何を伝えたいのか、そのためにどんな構成にするのかを考え、簡単な趣意書とタイトル案、目次を作成します。
これを出版社の編集担当者に見せて、説明します。
編集者の判断基準、ずばり「売れるかどうか」。 ある程度有名な、名前の知られた著者なら有利ですが、無名の著者でも大丈夫です。
ブログが人気とか、企画のテーマがタイムリーで話題性があるとか、著者が売れそうな属性やなんらかの特徴を持っているかかどうかなども関係します。
最近はむしろ、無名の著者の本が何かのきっかけでベストセラーになることのほうが多いと思います。
企画が通れば、原稿の作成にとりかかります。
原稿の作成方法は人それぞれで、かかる時間も様々。
一気呵成に書き上げる著者もいれば、じっくり時間をかけてまとめるケースもあります。
フリーの編集者である私の目から見て、大事なのはストーリーの流れです。
最初にその本では何を伝えたいのか、そのためにどんな枠組みで話を展開するのか、あらかじめ見えていたほうが読者は安心できます(小説などは逆の手法をとりますが)。
また、話が途中であちこち飛ぶのは、読んでいて辛いものです。
ところが、著者は自分が書いていることをよく分かっていますから、ついつい話が飛んだり前後矛盾していても、気づかないことがあります。
別に、難しい内容、他にはない意外な話、気の利いたフレーズなど、なくても構いません。
実用書、ビジネス書はとにかく、読みやすさが第一だと思います(レベルを落とすということではありません)。
原稿ができたら、出版社に渡し、本の体裁にレイアウトした校正が出てくるのを待ちます。
1回目が初校、それを訂正して2回目に出てくるのが再校、さらに3回目の三校くらいまでチェックを繰り返します。
「これでよし」となれば、印刷と配本に進み、だいたい2週間ほどで書店の店頭に並びます。
なお、本のページ数は、印刷の関係で16ページ単位になっています。
たとえば、160ページの次は176ページ、その次は192ページなど。
よく、本の最後のほうに他の本の広告などが入っているのは、調整のためです。
本が売れれば、著者には印税が入ります。
通常は定価の10%×印刷部数。 1,500円で1万部なら150万円です。
100万部も売れるベストセラーになれば別ですが、ビジネスとしてはそれほど効率の良いものではないでしょう。
実際、1万部では出版社もほとんど利益は出ません。
最低でも2〜3万部くらいが「売れた本」かどうかの目安ではないかと思います。
それでも、書店に本が並んだときの感動は小さくありません。
私自身、これまで何十冊とお手伝いしてきましたが、苦労した本ほど、達成感は大きいものです。
どんな仕事もそうでしょうが、この「手ごたえ」が大事なのかなと思います。
3...不動産投資入門 〜 地盤の基本(3)
- 実際にアパートなどを建てるとなれば、正式な地盤調査を行う必要があります。
「このあたりは地盤がいいから」「以前、建物が建っていたから」などといって地盤調査をやらないケースもあるようですが、危険です。
地盤は、ほんの数メートル離れただけで、大きく違うこともあるからです。
一戸建てや木造アパートなら、簡単にできるスエーデン式サウンディング法が一般的で、費用は数万円から。マンションなど鉄筋コンクリートの建物になると、より本格的なボーリング調査を行うことになり、数十万円から。
このコストをけちってはいけません。
ただ、土地を検討する段階ではそこまですることもありません。
簡単にチェックすることも可能です。
ひとつは、インターネットで調べるもの。
実際の調査データなどを集めて公開しているサイトなどがあります。
地盤の状態は、ピンポイントで調べる必要がありますが、だいたいそのエリアの状態はどうなのか見る参考にはなるでしょう。
http://www.jiban.co.jp/geodas/
また、自治体には「ハザードマップ」といって、大雨の際の浸水の危険性などを表示した地図を作成しているところが増えています。
これも、地盤を判断する資料になります。
http://www1.gsi.go.jp/geowww/disapotal/
地元の図書館で、昔の地図を見て、どのような土地だったか調べるのもお勧めです。
以前、水田などだったら、あまり地盤はよくありません。
さらに、現地周辺を歩いてみることも大切です。
坂の下、水路の周囲、川の土手沿いなど水の集まる低地は基本的に地盤は良くありません。
また、雨の翌日、周辺の道路に水がたまっているような場所、アスファルトや側溝のコンクリートがところどころ陥没しているようなところも要注意です。
このように、いろいろなルートで情報を入手し、比較するとおおまかなところは分かってくるでしょう。
そして、地盤があまりよくなかったとしても、それなりの注意と対策をとればいいのです。
地盤はとにかく建築の基本中の基本。
土地を探す場合はもちろん、すでに所有している土地にアパートなどを建てる場合も、事前にしっかり確認したいものです。
編集後記
- 先日、小学校の息子の宿題を見ていて、漢字の書き順がちょっと気になり、辞書で調べたら私の間違い。
最近は漢字ブームでテレビやゲームでも盛んにクイズ形式の問題がありますが、意外に難しかったり、勘違いに気づかされたりします。
人間いくつになっても勉強ですね。(古井)