■□ 王道通信 □■ Vol.50
目次
1...専業大家の独り言 〜 スゴイ大家さんのスゴイ手法
2...借地入門(7) 〜 「正当事由」制度
3...編集後記
1...専業大家の独り言・白岩貢
◇スゴイ大家さんのスゴイ手法
アパート専業大家・白岩貢
- 先週19日は1月の定例勉強会でした。
今回は、北海道の加藤ひろゆきさんをお招きし、たっぷり話してもらいました。
彼は投資手法もスゴイですが、見た目のインパクトや「不動産投資漫談家」を自称する話術もすごく、思い切り楽しませてもらいました。
勉強会の会員さんはぜひ、会員専用ページで深見君が用意してくれる予定のビデオ映像を見てくださいね。
加藤さんは基本的に、中古の激安物件を粘り強く情報収集し、それに「鬼のような指値」を入れて、キャッシュで買うという手法です。
目標利回りはなんと30%。
半端じゃありません。
「本当にそんなのあり? 大丈夫?」と思っていましたが、今回、詳しくまとめて聞いて、かなり理解できました。
情報収集の基本は、地元の新聞の3行不動産広告や情報誌、インターネットなど。
新聞2紙に毎日、赤ペン片手で目を通しているそうです。
たった3行から面白そうな物件かどうか判断するのですから、職人芸ですね。
いいなと思う物件については、FAXで図面を取り寄せ分析。
さらに、その中から「これは」というものを選んで現地を見に行きます。
見にいくのはピックアップしたうちの2割ほどです。
8割は営業マンに電話で話を聞いたりして、見切りをつけます。
さらに、加藤さん=「激安」というイメージがありますが、本人曰く「変なものは買っていない」とのこと。
少なくとも買ってから10年以上は持って、リフォーム費用もさほどかからない建物かどうか、知り合いの大工さん、建築士、ペンキ屋さん(ペンキ屋さんも建物には詳しいそうです)などにアルバイト代を払って見てもらいます。
また、建物のリフォームや修繕で簡単なものは自分でやってしまいます。
そのため、ホームセンターへ毎週2回は通って、建材や設備について使えそうなものはないか、価格はどれくらいか調べたり、電動工具などの使い方を習ったりしているそうです。
募集については、20社くらい業者を回り、気の合う担当者を見つけて懇意にしています。
自分のチームをつくる発想は、私と同じだなと思いました。
募集賃料の設定は、1人目で決まると低すぎ、7人くらいでも決まらないと高すぎだそうで、理想は3人から7人くらいの見学で決まる水準だそうです。
このほかにも、実践を通して身につけたテクニックやノウハウは、やはりしっかりしています。
世間では「不動産投資」とひとくくりでいわれますが、本当にいろいろなやり方があって、奥が深いですね。
私の王道流と加藤さんの手法はおそらく対極にありますが、それぞれ自分に合ったやり方をとことん極めるという点では、通じるところがあるように感じました。
借地入門(7) 〜 「正当事由」制度
- 借地における契約関係で、非常に重要な意味を持っているのが「正当事由」です。
今回は「正当事由」についておさらいしてみましょう。
「正当事由」とは、地主が契約更新を拒否し、借地の明け渡しを求める際に必要とされるものです。
ある意味、“黄門様の印籠”のようなもので、これがなければ契約は自動的に更新されます。
欧米では見当たらない日本独自の制度です。
日本でも、明治時代に民法ができた当初は、契約期間が終了すれば、地主は土地、建物の明け渡しを当然、請求できました。
しかし、土地などを生活の場としている場合、契約が終わったからといってすぐ追い出されるのも可哀想な面があります。
そこで、日本が太平洋戦争に突入して住宅事情が極度に悪くなってきた昭和16年、旧借地法、旧借家法に「正当事由」が明文として導入されました。
【旧借地法4条1項】
借地権消滅ノ場合ニ於イテ借地権者カ契約ノ更新ヲ請求シタルトキハ建物アル場合ニ限リ前契約ト同一ノ条件ヲ以ツテ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス。
但シ、土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合ソノ他正当ノ事由アル場合ニ於イテ遅滞ナク異議ヲ述ベタルトキハ此ノ限リニ在ラズ
地主にとっては、契約期間が終了し、借地権が消滅しても、「正当事由」があってかつ直ちに異議を述べないと、前の契約と同じ条件で借地契約が更新されてしまいます。
これを「法定更新」といい、いわば法律が地主に代わって契約書にハンコを押してしまうようなものです。
では、「正当事由」とは何か。
旧借地法や旧借家法は特に説明していませんでした。
そのため、裁判において、地主の事情と借地人の事情を考慮し、裁判官が判断していました。
借地や借家の明け渡しを巡る民事裁判は戦後、非常にたくさん起こされ、そうした裁判を通して徐々に「正当事由」の中身が形成されていったのです。
具体的な事情としては、- 地主が事業などでその土地を利用する必要がある場合
- 底地を買って新しく地主となった者が明け渡しを求める場合
- 周辺の土地利用状況が大きく変化しているような場合
- 一定の条件で明け渡してもらうという約束が予めあった場合
- 地主との信頼関係にひびが入るような行為が借地人側にあった場合。
- 地主が代わりの土地を提供した場合
- 地主が立退料を提供した場合 などです。
【借地借家法第6条】
前条の異議は、借地権設定者及び借地権者が土地の使用を必要とする事情のほか、借地に関する従前の経緯及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、述べることができない。
金銭による保障(立ち退き料)がはっきり法律上も規定されたことで、「正当事由」を巡る法的な争いはお金の問題の性質が強くなってきたといわれます。
なお、借地契約を終了させるのに「正当事由」が不要の場合もあります。
ひとつは、借地人が地代を払わなかったり、地主に無断で土地を第三者に転貸したときなどです。
この場合は、契約違反(債務不履行)として契約を解除することができます。
また、地主と借地人の間で契約を終了させ、土地を明け渡すという合意をした場合も、「正当事由」の有無を問題とする必要はありません。
編集後記
- 先日、ミス・ユニバースで優勝した日本人女性のインタビュー記事を読み、 印象に残った言葉があります。
高校時代の恩師が薦めてくれた京セラ・稲盛名誉会長の本が愛読書だそうで、その中に出てくる「神に祈ったか」という言葉が大好きなのだそうです。
製品開発上の難問をなかなかクリアできないで悩んでいた技術者に、ある夜、 稲盛氏が尋ねます。
「神に祈ったか」と。
もちろん、神頼みでもスピリチュアルでもありません。
「神に祈るしかないくらい、ぎりぎりまでやってみたのか」と 聞いているのです。 その技術者は、新たなエネルギーを得て、最終的に課題を解決したそうです。
人を奮い立たせる言葉の力について、思いを新たにしました。(古井)