■□ 王道通信 □■ Vol.38
目次
1...専業大家の独り言 〜 建物こそ収益力の源泉
2...不動産投資入門 〜 収入格差の影響
3...編集後記
1...専業大家の独り言・白岩貢
◇建物こそ収益力の源泉
アパート専業大家・白岩貢
- アパートや賃貸マンションを経営することを不動産投資といいます。
当たり前ですよね。
当然、投資ですから、投下資金に対するリターンが問題です。
たとえば、5,000万円かけて土地や建物を手にいれ、年間いくらくらい賃料収入が得られるか。
まさに、「利回り」です。
利回りは当然、高いほうがいいに決まっています。
そこで、いかに少ない投下資金で、より多くのリターンを得るかという発想が出てきます。
実際、土地の評価などでも「ディスカウント・キャッシュ・フロー法」といって、その土地が生み出す収益をもとに計算する方法が主流になっています。
しかし、よくよく考えてみると、不動産投資のリターン、特にインカムゲインを生み出すのは「建物」です。
もちろん、土地も借地として貸したり、青空駐車場にすれば収益を生みますが、はっきりいってわずかなものです。
土地の収益力は、その上にどんな建物をつくるかで大きく左右されるのです。
つまり、不動産投資の鍵を握るのは、「建物」。
私は以前からこのことを強調してきましたが、なかなかそのことが理解できない方も多いようです。
そういう方は、中古物件を買うとき、どれだけ安いかにばかり目が行って、地盤や構造に無頓着になってしまいがち。
表面だけきれいにしても、大地震などの際のリスクは高いまま残ります。
新築する場合も、工事費をどれだけ安くするかにしか注意がいかず、地盤調査や構造計算をしないケースがあります。
我々の王道でも、工事費については徹底的に無駄を省く努力をしますが、かといって絶対譲れない線もあります。
それが「建物重視」ということにほかなりません。
われわれの考える不動産投資は、20年、30年、50年先まで見通して行うものです。
だから、建物にこだわる。
このことは、何度、強調しても、しすぎることはないと思います。
2...不動産投資入門 〜 収入格差の影響
- 先ごろ発表された平成19年の「都道府県地価調査」によると、大都市圏では住宅地が平均4.0%、商業地10.4%上昇し、住宅地、商業地ともに前回の上昇率を上回る上昇を見せました。
地価上昇はまだまだ続いているという印象を受けた人も多いでしょう。
その一方、ここにきて、新築マンションの販売戸数や中古住宅の取引件数は急減しています。
かつて、地価や不動産の価格が上昇するときは、国民全体の収入もそれなりに上がりました。
ところが最近は、景気は良くても収入のほうは一部を除いて、どうも上がっていません。
それが新築マンションや中古住宅の売れ行きに影響しているようなのです。
厚生労働省が発表した今年6月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)では、基本給を示す所定内給与が14カ月連続で減少。
ボーナスを含めた現金給与総額も7カ月連続で減少しています。
原因はいろいろあるようですが、不動産投資の視点から注目すべきなのは、就業構造の変化です。
ここ数年、労働者に占めるパートやアルバイト、派遣社員など正社員でない人の割合が上昇しています。
総務省の調査では、非正社員は5年前に比べて300万人以上増加し、全労働者の33.2%を占めているそうです。
また、中小企業、特に労働者の多い卸小売や飲食店、宿泊業などの業種での賃金の下落が深刻です。
従業員30以上の会社では2年前から統計上、賃金が上昇していますが、最も小規模な5〜29人の会社は、2001年からずっと賃金が下がり続けています。
しかも、この規模の会社で働く人が最も多く、全労働者の42%を占めるというのです。
こうした中小企業の多い地方は、賃貸住宅の空室率の上昇、賃料相場の低下も起こります。
不動産投資においても、立地環境などから誰をターゲットにするのか、入居者をしっかりイメージする必要がますます高まっているといえるでしょう。
編集後記
- ここ数日、泥縄で経営学のことを少しかじっているのですが、企業の競争力についての分析はすごい奥が深いですね。
大目標を掲げてブレイクダウンしてくる欧米流が絶対かといえばそうではなくて、アメーバーのように積み上げていく日本流も成果を上げているそうです。
こういう経営学の発想や理論は、不動産投資にもとても参考になりそうです。
そのうち、月例勉強会のテーマに取り上げると面白いなと思ったりしています。(古井)