■□ 王道通信 □■ Vol.16
目次
1...専業大家の独り言 〜 建物の解体費とアスベスト
2...「王道チーム」リレーエッセイ 〜 石原弘治
3...不動産投資入門 〜 建物のことをもっと知ろう
4...編集後記
1...専業大家の独り言・白岩貢
◇建物の解体費とアスベスト
アパート専業大家・白岩貢
- 昨年から建物の建築費がどんどん上がっていますが、実は、解体費もすごく値上がりしているそうです。
特に鉄筋コンクリート(RC)の解体費は、べらぼうに高いとか。
鉄筋コンクリートの場合、コンクリートを砕き、鉄筋を切断するためいろいろ重機を使わなければならず、そうした機材や技能を備えた解体業者がバブル崩壊後、減っているのが原因のひとつ。
そして、もうひとつの原因が、アスベストです。
アスベストに対する法規制が厳しくなり、現在ではアスベストを含む製品の製造や使用が全面的に禁止されています。
すでにアスベストが使われている建物などの解体にも厳しい規制があり、たとえば、吹付けアスベストやアスベストを含む建材の除去作業を行う場合、事前に作業計画などを届出なければならず、除去作業そのものも講習を受けた作業者や資格者が行うことが義務付けられています。
勝手に、適当に壊せばいいというわけにはいかないのです。
撤去したアスベストの処分も大変です。
受け入れる最終処分場が限られ、費用も普通の廃棄物よりかなり高くなります。
日本ではこれまで約1000万トンのアスベストが使われ、特に1970〜90年にかけて、毎年約30万トンが輸入されました。
その8割以上が建材製品(吹付け材、保温材、耐火被覆材、断熱材、屋根材、壁材など)になっているというのです。
したがって、70年から90年頃に建てられたマンションやアパートは要注意。
古家付きの土地を探している人は、解体費がとんでもなくかかる可能性があるので、覚えておきましょう。
2...「王道チーム」リレーエッセイ 〜 石原弘治
- 前回の勉強会では小櫻設計士が路地状敷地の利点、制限、王道型アパートなどについてお話されたと聞いていますので、私はその先の設計プランについて解説してみようと思っています。
最近、「王道」で話が出る一種低層地域向けアパート、設備重視型アパート、そして集合住宅について簡単にいくつかポイントを上げてみます。
- 一種低層地域向けアパート
- 一種低層住居専用地域では、北側高さ制限など建物の高さが厳しくなります。
これをクリアしつつロフト付きタイプを建てようとすると、どうしても室内の空 間にしわ寄せがきます。
1階は入居者確保のため通常の階高(かいだか)をとると、2階のロフトはまさに屋根裏部屋になってしまいます。
その他、建物の形状が変形になりがちで、住戸数が多くないとかなり建築費にひびいてきます。
- 一種低層住居専用地域では、北側高さ制限など建物の高さが厳しくなります。
- 設備重視型アパート
- 基本は1LDKにファミリーサイズの贅沢ユニットバス、贅沢キッチン、贅沢トイレを入れようというプランです。
都市部ではロフト付き専有面積20m2以上とし、単身またはカップルの入居者を想定します。
これに対して郊外や地方では、ロフトがあっても効果的に家賃に反映されないので、ロフトなし専有面積35m2以上とし、カップルまたは子供1人くらいのファミリーを想定するのがよいでしょう。
なお、このタイプは、設備重視ですから、建物としての面白さをどこで出していくかという悩みがあります。
- 基本は1LDKにファミリーサイズの贅沢ユニットバス、贅沢キッチン、贅沢トイレを入れようというプランです。
- 集合住宅
- ここでは「長屋」でないという意味です。
2階には共用階段、共用廊下が付くので、建物の工事は単純化でき、内階段の面積も節約可能。
敷地がある程度広い場合に利点があります。
しかし、逆に入口通路のほか、ベランダ側に窓下空地(都条例)が必要となるなど、規制も増えます。
また、前面道路に向かって開放的になりやすいので、セキュリティーや視線への配慮が建物の価値を大きく左右します
(都市型と同じく、設計士の腕の見せ所ですね)。
- ここでは「長屋」でないという意味です。
- 勉強会では、分かりやすい図なども使って、さらに詳しくお話する予定ですので、ぜひご期待ください。
今回は、設計士の石原さんです。
今月20日の勉強会で講師を務めてもらいます。
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3...不動産投資入門 〜 建物のことをもっと知ろう
- これまで何度も述べてきたように、不動産投資では投資額(土地の購入費や建物の建築費など)に対してリターン(賃料収入)がどのくらい見込めるかが基本です。
具体的には、表面利回りやキャッシュフローなどを検討しますが、その際、ローンの借入額や金利がどうなるかが大きく影響します。
また、将来にわたり入居者が見込めるエリアで割安な土地を見つけ、競争力のある建物を建てる、というのが「王道」流。
サラリーマン投資家の方にとっては、土地探しが最初の関門になります。
当然、自分で動くことが大事。
いろいろな土地を見ることで、不動産を見る“目”が養われます。
こうした金融的、不動産的視点に加えて、もうひとつ建物の構造、設備、メンテナンスなど建築的な知識も身につけておくことをお勧めします。
これからの不動産投資では、単純に地価上昇によるキャピタルゲインを狙うことは難しく、賃料のインカムゲインにしても競争が激しくなっていく中で、どう維持するかが勝負。
そこで鍵を握るのが、建物なのです。
いまのうちから建築について勉強しておけば、競争力のある建物をつくることができるでしょうし、中古物件を探す際も失敗が少なくなるはずです。
たとえば、最近の木造は、法律の規制などもあって、20〜30年前とはかなり構造が変わってきています。
最も目立つのは、金物の使用。
土台、柱、梁などの接合部に、たくさんの金物が使われるようになりました。
また、耐震性を確保する上で重要な壁のつくり方も変わってきており、筋交いを用いる方法のほか、構造用合板などパネルを貼るケースも珍しくなくなってきました。
もちろん、一度に全部を理解するのは難しいでしょうが、折に触れて資料に目を通したり、専門家の話を聞いたり、そして実際の建物を見てください。
そうした繰り返しによって、理解が深まっていくはずです。
編集後記
- 5月の連休中、知人の結婚式に出席しました。
新郎新婦の表情や言葉の端々から、門出にあたっての初々しい思いが伝わってきて、また、それを祝福するため集まった人たちの暖かい気持ちが会場に溢れていて、とても素敵な時間を過ごすことができました。 - さらに、最近は仲人を立てないのが当たり前だそうで、進行も型にとらわれず、ケーキ入刃の後は「ファースト・バイト」といって相手にケーキを食べさせてあげる“儀式”とか、いろいろ変わってきているのに驚きました(結婚式は久しぶりだったもので…)。
これからのお2人の人生に幸多からんことをお祈りします!(古井)